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CSA(コンピュータソフトウェア保証) 今後の展望

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1.はじめに

CSA(Computer Software Assurance for Manufacturing, Operations and Quality Systems Software)が2025年9月に発行されました。
本コラムでは最近話題となっているCSAの誕生の背景と歴史そして今後の展望について考察したいと思います。

1.1 CSAの対象

CSAの対象は医療機器の製造又は品質システムに使用されるソフトウェアです。

1.2 背景

CSAは2011年に米国FDAの医療機器・放射線センター、物製剤評価研究センターが中心となり、業界と実施したCase for Quality 活動を通してその結果がまとめられたものです。
FDAは医療機器業界のCSV対応は査察やコンプライアンスに対する過剰反応であり、不必要で大量の文書作成、過度のテストなどに多くの資源を費やしていること、またこのため最新の情報技術を反映するどころか、その導入の足かせとなり、FDAの期待としていた本来あるべき患者の健康や製品品質の確保に不可欠な迅速な対応、最新技術の適用に悪影響を与えているとの確信を得ました。これらの課題の対応を背景にCSAが誕生しました。

1.3 CSAでの対応

CSAの主たる内容は以下の通りです。

  • ソフトウェアの意図する用途を明確にし、ライフサイクルを通じて開発・運用プロセスとシステムにリスク評価を適切に適用した品質システムを構築すること
  • コンプライアンスを最小限とし、意図した要求にかなうテストを適切なリスク評価をもとに実施し記録作成を行うこと。ただしコンプライアンスに最小限必要な文書・記録は必要
  • 作成文書とテスト・記録の取り扱いに、ツールの採用を含めた合理化、効率化を図ること
  • システム開発企業の成果を最大限に活用しながら、最新の情報技術や科学を導入しやすくすること
  • これらの活動により患者の生命や健康の維持及び高品質の製品を確保し、企業がその資金や人材、時間を効率よく運用し意図した要求を実現できること

なお、CSAは医薬品評価センターも認めており、医薬品業界にも適用できるとFDAは解説しています。

 

2.医薬品製造企業から見たCSA活動

医療機器製造向けに開発されたソフトウェア品質保証活動がCSAです。医薬品製造システムの開発・運用の場合、ソフトウェア開発の立場の違いには注意が必要です。
医薬品製造における品質保証活動の一環として、コンピュータ化システムバリデーション(CSV)があります。そしてコンピュータ化システムの構成要素には以下の4つの項目があります。

  • 1. コンピュータシステム(ハードウェア、ソフトウェア)
  • 2. 操作対象(設備・機器)
  • 3. 操作手順(SOP)
  • 4. 人(SOPに従って設備を動かす作業者)

CSAは上記1のそれもソフトウェア開発の信頼性保証について述べられたものですから、CSAがCSVに置き換わることはありません。このプロセスを適用しユーザーは必要かつ適切な記録およびエビデンスを獲得する必要があります。これは運用時の変更や不具合などの対応のためにもシステム品質を維持するための重要な要素です。

注意すべき点は受入テスト(UAT)です。これはユーザーが運用できる状態の確認であり、現場機器から業務のための操作、そのための設定を合理的に検証することです。サプライヤのシステムテストで保証された範囲は必ずしもUATそのものでの検証範囲ではありません。以下の表はCSVとCSAの対比を簡単にまとめたものです。

表1.CSVとCSA

CSA

 

3.留意点

医薬品製造企業の観点からのCSAにおける主な留意点は下記の通りです。
これらの作業により、適切なソフトウェアの保証アクティビティを確立します。

3.1 対象の違い

CSAは医療機器ソフトウェア開発の観点からの品質保証と医療機器や品質システム構築のためのバリデーション活動の関係を述べたもので、医薬品製造に求められるコンピュータ化システムバリデーションとの立ち位置の違いがある。

3.2 規制当局との関係性

CSA発祥の米国と日本の医薬品製造企業と規制当局との関係、保険制度の違い、薬価における当局の影響などの外的要素のため、開発手法が日本にそのままうまく適合するかどうかは不透明である。

3.3 ソフトウェア開発時の内製・外製

ソフトウェアおよび設備としての医療機器を同じ企業が製造する場合が多い医療機器企業とコンピュータシ化ステムの構築を外部に委託する医薬品製造企業のコンピュータシステムの構築方法が異なる。

3.4 プロセス重視

医薬品製造はその製造プロセスが重要でありコンピュータシステムはそのプロセス要素の一つである。システム構築がIT部門中心になると医薬品製造企業本来の業務プロセスの詳細な検討がおろそかになりがちである。

3.5 クォリフィケーション活動

ベンダーがCSAで開発したシステムでCSVを実施しようとする場合、旧来のIQ、OQ、PQの枠組みでCSVを実施しようとするためには、まずテストの製品品質への影響、患者の健康への影響、データインテグリティ等を評価し、エビデンスの必要度を評価しベンダーへの要求を明確化する必要がある。これを怠ると数十年前のように製薬企業自らOQとして機能テストを実施する必要が出てくる. しかし、これは製薬企業にとってはデメリットでしかない。

 

4.CSA活用のポイント

CSAを有効に活用するポイントをいくつか挙げてみます。

  • 1. 意図する用途を明確にするプロセスの確立と適切な活動メンバーの選定
  • 2. 意図する目的に対して実施するリスク評価と適切なテストの紐づけ
  • 3. 適応のための手順書の見直し
  • 4. ベンダーの活用と評価プロセスの確立
  • 5. 規制当局への説明のための資料と体制の構築

 

5.結論

結論として「CSAはコンピュータシステムの品質保証についての考え方なので、CSVにはそれほど大きな影響はなく、医薬品製薬企業が行うCSV活動に大きな違いはない。」といえるかと思います。
CSAは、システムの意図した使用を製品品質の確保、患者の健康への影響度に絞り込むことによるテストの合理化や、ツールの活用等によりシステム品質の向上、構築の時間やコストの低減を図ることができるベースを再確認しています。
これをふまえながら医薬品製造企業は2章のCSVの定義に立ち返り、テストに限らずCSVで身近に起こる品質問題の本質を把握し、その対応をとることが重要であり、それがCSA対応であると思います。
ヘルスケアにおけるCSAの活用は、先端技術の導入に大きな可能性を秘めています。当社はお客様とともに課題を見つけ、ともに解決に向かう伴走型のパートナーとして価値のあるサービスを提供します。

ビジネスエンジニアリング株式会社 CSVチーム
ビジネスエンジニアリング株式会社 CSVチーム
製薬企業様での品質保証や、PLC・DCS設備機器の品質保証など、豊富なCSV経験をもつCSVコンサルタントで形成されるチームであり、製薬企業様でのシステム導入時のCSV支援やPMO支援を日頃から行っています。 https://www.b-en-g.co.jp/jp/solution/pharma/csv.html