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医薬品製造プロセスのバリデーション

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本コラムでは「医薬品GMPのバリデーション」という広い概念のうち、とくに製造工程の再現性を保証する医薬品製造プロセスのバリデーション(Process Validation)を中心に説明します。

はじめに

本コラムでいう「医薬品製造プロセスのバリデーション」とは、医薬品の製造工程があらかじめ定められた品質の製品を恒常的かつ再現性をもって製造できることを、科学的根拠および客観的証拠に基づいて確認し、文書化する活動を指します。
以下は、バリデーション(Validation)の定義・考え方と医薬品製造プロセスにおけるバリデーションの特徴・差異の説明およびクォリフィケーション(Qualification)との差異の解説です。

1.バリデーションの基本的な考え方

1.1.バリデーションの一般的定義

一般にバリデーションとは、「その製品・システムが、意図された用途・要求を満たしていることを客観的な証拠に基づいて確認する行為」と定義されISO、IEEE、各種工学分野においても同様の考え方が採用されています。

1.2.他産業におけるバリデーションの共通思想(要求適合型)

原子力、航空、宇宙、一般ITなどの一般工学分野では、バリデーションの本質的な問い(Are we building the right system?)は「意図した要求・目的に合ったものを作ったか?」となり、設計や要求仕様(ユーザー要求、安全要求・事故時挙動・運用シナリオ、ミッション達成など)が正しく実装・実現されているかを確認する思想に基づいています。

分野 バリデーションの主眼
一般IT ユーザー要求への適合
原子力 安全要求・事故時挙動
航空 運用シナリオ・機能安全
宇宙 ミッション達成

1.3.一般工学分野のバリデーションの特徴

多くの産業に共通するバリデーションでは要求への適合確認が重視されます。その特徴として

  • 品質の中心は 設計・要求定義
  • 不具合は 修正・更新が可能
  • 導入時点での適合確認が中心となることが多い

という点があげられます。つまりシステや製品単体としての「正しさ」を評価することが主たる目的です。

 

2.医薬品製造プロセスバリデーションの考え方

医薬品製造プロセスにおけるバリデーションでは、「正しい製品を作れたか」ではなく「同じ品質を恒常的に作り続けられるか」がバリデーションの思想となります。これは医薬品GMPの中心思想そのものです。詳細は3章で述べることにします。

2.1.クォリフィケーションとバリデーション

バリデーションに似た用語にクォリフィケーションがあります。日本語では適確性評価、適格性確認などと訳されています。クォリフィケーションとバリデーションの違いを料理で例えると分かりやすいと思います。

2.1.1. クォリフィケーション

新しい鍋の温度の上がり具合や、煮えムラの確認
新しい刃物の切れ味を確認
電子レンジの加熱時間が、取り扱い説明書の通りに操作して、自身の操作感や温度感と合うか
➡️“道具そのものが期待通りに機能するか”を確認する活動です。

2.1.2. バリデーション

レシピどおりに作ると、毎回同じ品質のカレーになるか確認
味・見た目・とろみ・カレーの香りが安定しているか確認
➡️“目的の料理が、作る工程全体で期待どおりに作れるか 、結果が望み通りのものであるか”を見る活動です。

2.2.医薬品製造システムにおけるクォリフィケーション

医薬品製造の設備やシステムが、実際の使用条件で目的どおり使える状態であることを証明する活動で対象は主に設備、装置、製造・試験システムにおいて

    • 設計どおりか (DQ:Design Qualification)
    • 据付が適切か (IQ:Installation Qualification)
    • 正常に動くか (OQ:Operation Qualification)
    • 実運用で問題ないか (PQ:Performance Qualification)

を段階的に確認します。
「使ってよい状態であることの土台作り」がクォリフィケーションです。
従って、クォリフィケーションは、設備やシステムが要求事項を満たすことを確認する活動であり、バリデーションを構成する重要な要素の一つです。

2.3.プロセスバリデーション(PV)

医薬品製造の設備やシステムのクォリフィケーションが済んだ後に、実生産レベルで同じ品質の医薬品を継続的に製造できることを確認します。
PVが完了して初めて商用生産を開始できます。

 

3.医薬品製造プロセスバリデーションを特徴づける前提条件と安定供給

3.1.製品を全数保証できないという前提

医薬品品質の重要特性の多くは破壊試験を伴います。製品に破壊試験を実施すると製品に何らかの破損、欠損が生じ、商品としての価値がなくなる、つまり製品で無くなります。従って、医薬品は完成品の全数検査が不可能です。
そのため医薬品では、製品そのものではなく「工程が期待通りの製品品質を生み出すこと」を保証するという考え方になります。

3.2.品質は設計され工程の再現性で実現・維持される

他産業では設計が品質を支配します。医薬品でも品質は設計されますが、最終製品の全数保証が難しいため実際には製造工程の再現性管理が極めて重要になります。医薬品では同一設計であっても原料ロット差、作業者差、手順差、設置環境条件差、設備状態差などによって品質変動が発生する可能性があります。そのため医薬品GMPでは「品質は開発段階で設計され製造工程で実現・維持される」という考え方が重視されます。

3.3.失敗が不可逆であるという性質

他産業の一般ITシステムなどでは、不具合発生後に修正や更新が可能です。一方で医薬品は「市場出荷後に製品の修正ができない。」、「健康被害に直結する可能性がある。」、「回収時の社会的影響が大きい。」というという特徴があります。
この不可逆性が、医薬品バリデーションが厳格に要求される大きな理由です。

3.4.製品の安定供給とバリデーション

この数年、日本の製薬企業において医薬品の供給不足問題が生じています。むしろ近年の日本では、供給不足問題の一因として「品質不正やGMP不適合」が広く認識されるようになりました。
例えば近年の後発医薬品製造業者における品質問題は、製品回収や製造停止を招き、医薬品供給不足の一因となっています。2025年薬機法※改正では、こうした背景を踏まえ、品質保証責任者の責任強化など品質システムの強化が図られています。プロセスバリデーションや洗浄バリデーションを含むGMP活動は、品質確保だけでなく安定供給の観点からもその重要性が再認識されています。

※正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

 

4.まとめ

医薬品製造プロセスにおけるバリデーションとは、製品やシステムの「正しさ」を示すものではありません。製造工程が、GMPで要求される品質を恒常的に生み続けることを保証する活動です。
医薬品製造プロセスの特徴は次の5点に集約されます。

      • 1. 製品そのものを全数検査できない
      • 2. 品質は開発段階で設計され製造工程で実現される
      • 3. 不具合は出荷後、市場で取り戻せない(不可逆性)
      • 4. GMPの目的が「正しい製品」ではなく「恒常的品質」である
      • 5. 医薬品の安定供給も恒常的品質の確保と合わせ品質システムの一部である

こうした医薬品製造のプロセス特性と、一般他産業のバリデーションに対する考え方の違いを理解した上で、システム導入に臨むことが必要です。

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ビジネスエンジニアリング株式会社 CSVチーム
ビジネスエンジニアリング株式会社 CSVチーム
製薬企業様での品質保証や、PLC・DCS設備機器の品質保証など、豊富なCSV経験をもつCSVコンサルタントで形成されるチームであり、製薬企業様でのシステム導入時のCSV支援やPMO支援を日頃から行っています。 https://www.b-en-g.co.jp/jp/solution/pharma/csv.html