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コラム

データマネジメント

データマネジメント知的体系ガイド(DMBOK)の読み解き方

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現在、企業活動はデジタルトランスフォーメーション(DX)という大きな潮流の中にあります。これは、情報技術を駆使してビジネスを変革し、新しい価値を創出するプロセスを指しています。そしてその核心に存在するのが「データ」です。

データは、新たなビジネスモデルの構築や既存の業務プロセスの効率化など、企業の成長を支える鍵です。そのため、収集・整理・分析・活用といった、データに関する様々な観点を総合的に勘案する「データマネジメント」の考え方が重要性を増してきています。

しかしながら、一言でデータマネジメントと言っても、どの企業にも当てはまる唯一の正解があるわけではありません。それぞれの企業が抱えるビジネス課題や目指すビジョン、企業環境は異なり、また利用可能なデータの種類や量も異なります。それゆえデータマネジメントを実践するプロジェクトにおいては、それぞれの企業固有の課題が発生し、またそのソリューションに関しても様々なパターンが考えられます。

本コラムシリーズでは、筆者のこれまでの知見を基に、一般論ではなく具体的なデータマネジメントにおける課題や実践のポイントをご紹介していきます。初回となる今回は導入として、データマネジメントにおける教科書的な位置付けとなっている、「データマネジメント知識体系(DMBOK)」の読み方について筆者なりのポイントをご紹介します。


データマネジメント知識体系ガイド(DMBOK)とは?

Data Management Association(DAMA)という、世界各地に支部を持つ、全世界のデータ専門家のための国際的な非営利団体があります。このDAMAから、データマネジメントプロフェッショナルにとって有益な資料かつ指針として刊行されている書籍が「データマネジメント知識体系ガイド(The DAMA Guide to The Data Management Body of Knowledge:以下、略称DMBOKで表記)」です。

DMBOKでは、企業がデータを効果的に管理し、使用するためのフレームワークと基準を提示しています。また、データマネジメントの各領域を網羅しており、データガバナンス、データ品質、データアーキテクチャ、データモデリング、データストレージと運用など、多くの重要なトピックについて詳細に説明しています。

DMBOKの記述内容のイメージとしてよく象徴的に紹介されているのが、DAMAホイール図です。データガバナンスを中心に、データマネジメントの10の主要な知識領域が環状に配置されており、これらの領域が相互に関連していることを示しています。

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これらの知識領域は、それぞれに対して多様・網羅的に詳細な記載がされており、内容を一言で表すのは困難です。ここでは、それぞれの知識領域の内容を踏まえて実務に反映する場合、どのような実践となって現れてくるかという例をあげてみます。

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「データアーキテクチャ」は、システム構成のことではない!?

DMBOKはしばしばデータマネジメントの各領域を広く網羅していることから入門書として紹介されることもありますが、全編を読み解いていくのには難しい点があります。

  • 17章671ページと、かなりのボリュームがある
  • 概念的・学術的な記載や言い回しの部分が多く、ある程度の知識・経験がないと具体的なイメージがし辛い箇所がある
  • 各領域の記載内容に他領域との関連・重複の話題が多く、記述が分散している部分がある

言い回しや分散の例としては、前述のDAMAホイール図の「データアーキテクチャ」が例にあげられます。最近いくつかの書籍・ネット記事などで、「データアーキテクチャ」の説明として、システムアーキテクチャ・システム構成図のようなものを書くことであるかのような記載を複数見かけましたが、これはDMBOKの記載とは少しずれています。

DMBOKの「データアーキテクチャ」で記述されているのは、企業全体(エンタープライズレベル)での大枠のデータモデルやデータフローを作成し、またそれらを実現するロードマップを作成するということです。具体的なシステム構成についてはここでは言及されていません。いわゆるアーキテクチャ図は、「参照データとマスタデータ」や「データウェアハウジングとビジネスインテリジェンス」などでそれぞれの領域に対応した内容が例示されています。

このようにある程度全体感を把握していないと、求める記述がどこに書いてあるのか探すのに手間がかかることがあります。


全体感を捉えた上で、辞書的に利用する

DMBOKは領域の紹介順の意図が不明瞭です。また、DAMAホイール図に対応した章立ての部分と、ホイール図には記載されていない章(1, 2, 14~17章)もあり、これらから全体感を捉えるのが少し難しくなっているように感じます。

各章の内容を下表のように大まかにグルーピングしてみました。把握したい内容に応じて関連する章・領域をまとめて参照するなど、理解の手助けになれば幸いです。


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データマネジメントのシリーズ初回として、「データマネジメント知識体系(DMBOK)」の概略と読み方例をご紹介しました。

次回以降、DMBOKに語られているようなデータマネジメントの様々な領域・角度から、経験より得られた具体的なヒントや視点をご提供していきたいと思います。

次回は・・・
「データ利活用基盤アーキテクチャのバリエーション」について解説する予定です。近々公開。ご期待ください。


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加藤義弘
加藤義弘
スクラッチ開発からERP、BPM等のアプリケーション導入コンサルタントを経て、近年はMDMやデータ利活用基盤導入などのデータマネジメント関連プロジェクトにおいてシニアアーキテクトとして活動。構想策定・要件定義・データモデル設計等、データマネジメント上流フェーズのコンサルティングを担当する。 DAMA(データマネジメント協会)日本支部会員。

加藤義弘の仕事への取り組みがわかるインタビュー記事はこちら