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コンピュータソフトウェア保証(CSA)解説(1/2)

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FDA(アメリカ食品医薬品局)から2022年9月13日に“CSAガイダンス”(医療機器のコンピュータソフトウェア保証に関するFDAガイダンス)ドラフト版が発出されました。時代はいよいよ”コンピュータソフトウェア保証“に突入します。本コラムでは、CSAとは何か、具体的に何をすればよいのかを解説していきます。
※ドラフト版は2022年11月14日までコメント収集中です。

1.コンピュータソフトウェア保証(CSA)とは

CSAとは医療機器のコンピュータソフトウェア保証に関するFDAガイダンス(Computer Software Assurance for Manufacturing, Operation and Quality System Software「製造、運⽤、および品質システムソフトウェアのコンピュータソフトウェア保証」)を示します。
このガイダンスは、FDAの医療機器・放射線保険センター(CDRH)において、ソフトウェアを内蔵する医療機器、あるいはそれ自体が医療機器製品と定義されるソフトウェア以外の医療機器製造、運用、品質システムのソフトウェアに適⽤する目的で検討が開始されました。その理由としてこれらの分野のバリデーションについてはQSRに記載がありますが、一方で具体的な内容や方法を示すガイダンスがなかったことが挙げられます。
CSAガイダンス作成には医薬品評価研究センター(CDER)及び生物製品評価研究センター(CBER)さらに民間のボランティア団体GAMPも協力しています。

 

2.CSAガイダンスの背景

医療機器の品質向上のための調査活動 Case for Quality

FDAのCDRHは、ライフサイクル全体で⾃動化、情報技術、およびデータソリューションを使⽤することで、ヘルスケア製品品質と患者の安全性を高めるための大きなメリットが得られると考えていました。製品品質を向上させるソフトウェアの品質活動、IT技術の積極的な利用は、⾃動化・情報化を目指す他の業界ですでに実用化され拡大していました。CDRHは医療機器の製造、運用及び品質システム構築においても自動化およびITソリューションの普及をサポートする必要性を考え、それらのソフトウェア品質に関し2011年からCase for Qualityという調査活動を開始しました。

FDAは「ソフトウェアは意図した用途を満たすという品質を維持する必要があり、ヘルスケアにおいては患者の健康や生命、製品の品質の確保こそが果たすべき本質的要求である。IT技術や自動化のソフトウェアバリデーションはこのための検証活動である」と認識していました。
しかし、Case for Qualityによる民間との協力の調査活動から、特にソフトウェアバリデーションの取り扱いについては、FDAの意図と業界の対応の差異や課題を認識するに至りました。

FDAの捕えた課題

ソフトウェアバリデーションの在り方が、以下の理由からIT技術や自動化の普及の障害になっていると判断しました。

  1. 医療機器業界はソフトウェアバリデーションの要求を、対応に時間と手間のかかる作業としてとらえ、またFDA査察への対応作業ととらえている。つまり業界は不適合を指摘されると直ちに是正措置を講じる必要があり、さもないと最悪の場合、製造施設が閉鎖され、厳しい罰⾦が科せられる可能性がある。これらを避けるため医療機器業界はIT化や自動化に伴う上記ソフトウェアのバリデーションを嫌い、他の業界程、IT化や自動化による技術革新が進まない
  2.  
  3. 本来あるべき目的の検証には不⼗分なテストや、必ずしもソフトウェアの品質には影響しない膨大なテストや文書作成がソフトウェアバリデーションの実施に必要とされ、逆にこれらがソフトウェア品質に対する障害となっている

新しいアプローチ

FDAはCase for Qualityの検討中に得られた課題を解決すべく、新しいITテクノロジーの使⽤をサポートするために、従来のソフトウェアバリデーション概念をパラダイムシフトした新しいガイダンスを起草しました。

その基本は
「バリデーション文書や記録は、査察官にではなく、製品品質や患者の健康に、そして組織にとって価値のあることが重要である。これらの作成には企業にとって最も負担の少ない方法を選定することが重要である」
ということでした。
そして企業の協力のもと課題克服のパイロットプログラムを作成し実施しました。その結果、有効性を確認しています。このような評価活動を基礎に作成されているのがCSAガイダンスです。

3.パラダイムシフト

CSAのポイントはドキュメント作成に焦点を当てた従来のバリデーション概念を見直し下記のような工程を経たテストに重点をおいたものです。

  1. 患者の生命や製品の品質への影響に焦点を当てリスクベースアプローチを実践する
  2. クリティカルシンキング(批判的思考※1)によるソフトウェア品質の保証
  3. サプライヤの品質活動を評価し活用する
  4. これに基づくテストによる検証を重視する
  5. 文書量を削減する

すなわち目標は文書化ではなく患者の健康、生命や製品品質の確保を第一とし必要かつ十分なテストによる検証を重視としています。
例えば従来のバリデーションの作業量は 文書化80%  必要なテスト 20% と評価されますが
これを                文書化20%  必要なテスト 80% にしようとするものです。

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※1 クリティカルシンキング(批判的思考)はQMS ISO13485 2016のテクニカルレポートTR80002にも説明されている考え方です。要約すると、ある課題に対し本当の問題点は何かを多方面からまず考えるというものです。システムは直接製品の品質や患者の生命、健康に影響を与えるか、サプライヤの品質システムが信用できるか、データの完全性は確保できるかなど、その程度を総合的に評価しようとするものです。

 

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ここまでで、ガイダンスのコンセプトをご理解いただいた上で、次は具体的な方法について解説します。

コラム |コンピュータソフトウェア保証(CSA)解説(2/2)に続く

藤田 雄一
藤田 雄一
ビジネスエンジニアリング株式会社
アンモニアやエチレンなどのプロセスや原子力電力・再処理施設、遊園地などの設備の計装・制御設計を経て、ヘルスケア業界におけるPLC、DCS、MESやERPのコンピュータバリデーションを担当し現在に至る。
ISA日本支部会員、ISPE日本本部GAMP COP会員 元副委員長