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制御システム技術者への道~制御システム技術者が活躍するための8つの秘訣~

これまで多くのコラムを通して、制御システム設計や設備連携プロジェクトに係わる各種のトピックスについてお話ししてきました。これまでの纏めとして、皆様にこれから制御システム技術者として活躍して頂くための8つの秘訣(=私なりの心構え集)をご紹介します。

技術者としての目標

「これこれの要素技術・専門知識を習得しなさい」などというのは技術者にとってごく「当り前の話」ですので、ここでは省略します。

お願いしたいことはただ一つ、皆様の目標が専門家(Specialist)でも万能選手(Generalist)であっても、とにかく「その世界でナンバーワンになること」を目指して下さい。実際に一番になれるかどうかは別として、そういう大きな夢を抱いて全ての課題に取り組む覚悟が大切です。

政治の世界では、国家予算の仕分け会議で某代議士が「二番じゃ駄目なんですか?」という名言(迷言?)を吐きました。私見を申し上げるなら、「二番なら良いんじゃないか」と考えた瞬間にオシマイなのです。一度楽な道を選んでしまうと、そのうち辛くなったら三番、四番、・・・と限りなく後退していくことでしょう。

制御システムの立ち位置

基本に立ち戻って、制御システムの立ち位置って一体何でしょうか?「制御=コントロール=何かを動かすこと」という素直な気持ちの方が多いことと思いますが、実社会ではそう簡単には行きません。
私自身、昔はバッチプラント、連続プラント、製造ライン、物流ライン等の制御設計も手掛けました。しかし現在では、それらは設備・機器・計装などの専門ベンダーが対応することが多くなっています。今日の制御システムでは、垂直&水平方向の各種サブシステム間の連携動作が、より大きな課題なのです。

システム全般の方式設計(System Architecture)では、下記のような課題が挙げられます。
・全体システム構想の計画立案
・業務フロー、情報フローの定義
・個別システムの役割・機能の割り振り
・インフラ設計(例:ネットワーク、コンピュータ、入出力機器、電源システム)
・データ設計(例:設定データ、指示データ、実績データ、関連情報)
・インターフェース設計(例:RDB、TCP/IP、FTP、シリアル通信)

ところが、純粋な情報システムだけでなく製造工場・プラント等で多種多様な設備・機器が入ってくると、急にソフトとハードという全く別の世界を融合させる難しい作業になります。それこそが制御システム技術者の出番で、対象がどんなハードだろうと兎に角「全てを繋げる」役割を担います。こう説明すると非常に格好良い仕事に聞こえますが、実態は誰もが嫌がる底なしドロドロの泥沼です!ですがやりがいのある仕事です!
私がこれまでに書いた様々なコラムをご覧頂ければ、その辺の一端を窺い知って頂けるものと思います。

プロジェクトを理解すること

設備連携システムの構築プロジェクトで、皆様が制御システム担当になったと仮定します。最初に明確にして頂きたいのは、対象プロジェクトの全体像とそこで何を期待されているかです。
「そんなことは受注時の契約資料一式を見れば明白だ」と安易に考えると後で痛い目に遭います。提案段階でお客様とどこまで深くお話しされたかにも依りますが、時間の制約もあって通常はかなり省略したレベルに止まっています。
ここは出来る限り早い時点で、関係各位(例:お客様、既存ベンダー、PM、他部門)からの情報収集に努めましょう。これまでのコラムをお読み頂いた方は覚えて下さっていると思いますが、一番肝心なのは「対象プロジェクトの本質、中核は何か?」という点です。部分的な枝葉末節に深入りして森全体の姿が見えなくならないよう、充分ご注意下さい。

なお純技術面とは別に、次の2点だけはシッカリ心に決めて頂きたいものです。
・自分は対象プロジェクトでどんな役割を果たすか?
(=業務目標、プロジェクト殿と相談)
・自分は対象プロジェクトで何を得ることを目標とするか?
(=キャリアパス、上司と相談)

野次馬根性を持つこと

急に下世話なキーワードになって恐縮ですが、もう少し耳に心地よい表現では「前向き思考」ということです。
かつて、「成果待ち上司と指示待ち部下」という表現を聞いたことがありますが、上から指示された作業だけをただ黙々とこなすのでは困ります。その真逆を行って、常に自分からどんどん前に出る、何でも興味を持つ、何でも尋ねる、何でも確かめる、何でも口を出す、という心掛けで進みたいものです。その前提としては、物事に先入観を抱かず常に疑問符(「?」マーク)を持つことです。まるで知りたがり屋の三歳児みたいですが、「どうして?」を口癖にしては如何でしょうか。

上記は自分自身の仕事に止まらず、他プレイヤーの作業内容・結果にも目を光らせます。ここで(他メンバーではなくて)他プレイヤーと書いたのは、自分が担当するプロジェクトの枠をはみ出すという含みがあります。

何でも疑うこと

上記の続編として、物事を鵜呑みにせずとにかく何でも一度は疑ってみることです。例えば、
・お客様の要求仕様は妥当か?
・「仕様外」ならどうなるのか(どうすべきか)?
・まだ決めてない/書いてないことはないか?
・課題が「TBD(別途決定)」のままになっていないか?
・進む方向(とりわけ方式設計)は正しいか?
・もっと良い解決方法はないのか?
・機器仕様/プロセス仕様を正しく理解しているか?
・トラブル分析は十分行ったか?
・テスト結果は正しいか?
・確認方法はこれで十分か?

上記は自分一人の胸の中で呟くだけではなく、周囲の方々とも積極的に共有しましょう。そして、ひたすらシツコク、さらにシツコク・・・。
もし日々これら全てを実践し続けたら、周囲の方達から「嫌な奴」というレッテルを貼られるかも知れません。改めて考えてみますと、もしかしたらそれこそが本コラムの最終目標なのかも知れません。皆様は、会社や仕事で「良い人」になることなど決して目指さないで下さい!

プロジェクト意識を持つこと

技術者とプロジェクト管理者とりわけPMとは、一見かなり立場・役割が違うように思われます。しかし最終的な目的は同じですので、時にはプロジェクト的な視点(=一段高い立場)で考えることも大切です。具体的には、いつもQCD(品質、費用、時間)を考えながら仕事をするのです。
このうち、技術者にとって一番やりにくいのはC(コスト=費用)でしょう。たとえ私が「お金勘定も仕事のうち」とケチケチ大作戦を勧めても、皆様は技術者のプライドが許さないかも知れません。繰り返しになりますが、技術的に高度な(=お高い)解決策が最上とは限りません。あまりガチガチに考えずより柔軟な思考を心掛ければ、思いがけず効率的かつ低コストの解決策が見つかるかも知れませんよ。

自分の苦手な部分を克服すること

公私を問わず、人には誰でも「苦手」があります。それが単に心の中での舌打ち程度なら良いのですが、場合によっては仕事に支障をきたす恐れがあります。もし苦手な分野、技術、役割、作業などがあると、えてして無意識にそこを避けたり逃げたりした結果、「抜け」が発生したりします。たとえ辛くとも、ここは意識的に自分の苦手に立ち向かいその対応策を考えましょう。

この話題で最も微妙なのは「人」に係わる部分です。皆様は、特定の誰かが苦手(大嫌い)ということはありませんか?たとえば、所属部門、他部門、プロジェクト管理者、お客様、協力会社、などに。社内外を問わず誰とでも簡単に友達になれ敵など誰一人いない、と言える方はごくごく稀(皆無!)でしょう。しかし、嫌いな人と口をききたくないからと避けていると、その人の担当業務とのすり合わせが不十分になり極めて危険です。ここは自分の気持ちをグッと我慢して、何とか苦手な相手とも出来るだけ話して下さい。その際に、「顔を見たくないのでメールだけで済ます」のは大いに問題で、時には直接会って話すことも大切です。
最後に逆説的な言い方ですが、仕事相手と余りに馴染み過ぎないようお気を付け下さい。仲良くなることは一向に構いませんが、私的な感情が優先してズブズブ/ナアナアの関係になると、仕事に支障の発生する場合がありますので。

現場大好き人間

最後に唐突な質問ですが、皆様は「現場」がお好きですか?かつて私がお世話になっていた会社では、新入社員を必ず国内外の建設現場に実習に出していました。ところが残念なことに、今時の若者達は何故か現場が嫌いなようです。とある豪傑など、「髪の毛が乱れるから嫌だ」とヘルメット着用を拒否した、という都市伝説さえ聞きます。

私は現場が大好きです、そして皆様方にも現場を好きになって頂きたいのです。いくらIT&ネット技術が進展しても、現場こそが制御システム技術者の原点だと信じています。今日からは、是非とも私のような「現場大好き人間」になって、大いに仕事を楽しみまたご活躍下さい!

 

佐野 優治 氏
佐野 優治 氏
ITコンサルタント
キヤノン、東洋エンジニアリング、YMP-iを経て現在はITコンサルタントをしています。主な経験分野は、電子機器制御、ラボオート(LA)、連続プロセス制御・監視、バッチプロセス制御・監視、自動車製造ライン、製造管理システム(MES)、医薬製造向け現場連携・SCADA、生産管理システム、など。根っからの「現場好き人間」で、設備⇔システム融合をライフワークとしています。
著者メールアドレス: sano.yuji@mbm.nifty.com (ご意見、ご感想などお気軽にお寄せ下さい。)