コラム | {{ site_settings.logo_alt }}

コラム | ISO20022の概要および、SAP対応のポイント | {{ site_settings.logo_alt }}

作成者: 原子 慶太|Jul 14, 2025 12:20:31 PM

 

 ISO20022とは、金融機関や企業が決済、証券、貿易金融などの金融取引に関する電子データをやり取りする際のメッセージフォーマットに関する国際標準規格です。国際銀行間通信協会(略称:SWIFT)は、外国送金について2025年11月に、新フォーマットへの完全切り替えを発表し、外国送金を行う企業はそれまでにシステムを対応させる必要があります。本コラムでは、新フォーマットの概要とSAPシステムにおける対応のポイントについて解説します。 

 

ISO20022の適用で送金人から受取人まで一貫したフォーマットに

金融機関や企業が決済、証券、貿易金融などの金融取引に関する電子データをやり取りする際のメッセージフォーマットに関する国際標準規格です。現在は、外国送金は、SWIFT(国際銀行間通信協会)によるグローバルネットワークを介して決済されています。銀行間の送金指図のフォーマットはMTフォーマットと呼ばれ、通信容量に制限がある1970年代から利用されている古いデータフォーマットが使用されています。

ところが、SWIFTは、2023年3月からISO20022に準拠した新フォーマットの適用を開始し、2025年11月に、新フォーマットへの完全切り替えを発表しています。

切り替え後の外国送金は下図の通り、送金依頼、銀行間の決済、お客さまへの入金通知に至るまで、共通フォーマットによる情報伝達となります。送金人の立場からみると、送金銀行に連携するフォーマットが変更になり、それに伴い、外国送金を行う企業ではシステム対応が必要になります。

MUFGの公開ページ 外国送金のISO20022移行について(送金依頼方法の変更)https://www.bk.mufg.jp/houjin/kokusai_gaitame/iso20022_ikou/index.htmlを参考に、B-EN-G社内で作成

 

ISO20022導入のメリット

構文にXML形式を使用しているため、以下のようなメリットがあります。

  • 送金目的や請求書番号、商品の詳細、インボイス情報といった、これまでは伝えきれなかった多様な情報をメッセージに含めることができる
  • 拡張性に優れ、新たな項目の追加が可能
  • 記述項目が増え、細分化されることで、セキュリティやコンプライアンスについて厳格にチェックできるようになり、マネーロンダリング対策や効率性の向上が期待できる

 

システム対応のポイント

ここからは、SAP S/4HANAやSAP ERPを導入されている企業様向けに、対応のポイントを説明していきます。いくつかパターンが考えられるものもあります。

企業から金融機関への情報の渡し方

ISO20022対応の正式フォーマットはXML形式ですが、企業から受け取ったCSVファイルを金融機関側でISO20022準拠のXML形式に変換できる場合があります。

(1)XMLではなくCSVファイルを選択するケース

CSV形式を選択しても、ISO20022準拠に伴い送金目的コードや住所の詳細情報など、必須項目が多数追加されているため、既存のフォーマットを変更、もしくは新規作成する必要があります。

(2)企業から金融機関に渡す形式をXML形式とした場合

ISO20022準拠のDME(支払媒体書式)「JP_ZENGINKYO_I_XML」を適用・有効化するためのSAP Noteが用意されています。Note適用後、DMEエンジンを使用し項目のマッピング設定を行うことになります。

仕入先マスタの住所細分化が必要

従来のフォーマットでは、住所をまとめて出力しているので、ひとつのテキスト項目にまとめて入力する運用で問題ありませんでした。
しかし、ISO20022準拠のフォーマットでは、住所を細分化して出力することが必要になるため、マスタでの住所の持ち方も検討の対象となります。もちろん、現行でも細分化した形で設定されているのであれば検討の必要はありません。

システム対応としては例えば、以下2つの方針が考えられます。

  • 案1)仕入先マスタの入力方針を変更する

例)住所の項目を分けて入力する、区切り文字をつけて入力する等

  • メリット :入力のルールを徹底できれば、メンテナンス性が向上する
  • デメリット:住所を参照している既存機能について改修が発生する

案2)現在使用している項目はそのままで、新しい項目(未使用項目)に細分化した住所を保持する(住所を二重で保持する)

既存項目はそのままのため、住所を参照している既存機能の改修が不要となります。また、切替直後のアクシデントに対応しやすい。

  • メリット :入力のルールを徹底できれば、メンテナンス性が向上する
  • デメリット:既存項目と詳細化した住所でダブルメンテが必要

上記は一例ですが、それぞれメリット、デメリットがあるため、業務運用、予算、スケジュール等を加味した上で対応方針を決める必要があります。

銀行マスタ

送金先銀行のBIC(SWIFTコード)を入力する必要があるため、銀行マスタにて管理する必要があります。中にはBIC(SWIFTコード)を持たない金融機関もありますが、その場合は各国決済システム別銀行支店コードをセットします。
両方のコードともに不明な場合、詳細化した住所を各タグに設定する必要があります。

銀行マスタの住所項目の使用方法も、仕入先マスタの住所項目と同じように、検討要素になります。

支払方法

ISO20022対応した送金フォーマットを支払方法に割り当てることになります。

支払方法を新規に追加する等対応方法は複数あり、こちらもそれぞれにメリット、デメリットがあります。仕入マスタと同様でお客様のシステム使用状況、予算、スケジュールを加味した上で対応方針を選択します。

法規制上の申告

特定の送金先銀行所在国において、以下の情報が必要な場合があります。

  • 各国中央銀行に報告必要な情報
  • 外為法適法性確認に必要な商品の品目等の情報
従い、特定の国に送金があるかの取引状況の確認および、要件について必ず確認をしなければなりません。また、対応が必要な場合はその項目をどのように持たせるか、どのように入力するかについても検討が必要です。

※MUFGのホームページに「外国送金ご依頼時のご留意事項」が掲載されています。参考情報としてお知らせしておきます。
https://www.bk.mufg.jp/tsukau/kaigai/soukin/kunibetsu_ryuui.html

 

最後に

ISO20022対応は電文フォーマットの変更のみだと思われがちですが、対応方針によってはマスタ住所の保持方法や支払設定に影響が発生し、既存業務やシステムへの影響が大きくなるため、早いうちから検討着手が必要と考えます。

新フォーマットで銀行側が取込処理できるのかが一番肝になるポイントのため、完全な状態ではなくても、銀行側が処理できるかを早めにテストし、段階的に100%のものを目指していくアプローチをおすすめします。

現在、弊社では様々なお客様に対して、こういった検討およびシステム対応を支援しております。何かお困りのことがございましたら、ぜひご相談ください。

 

お役立ち資料ダウンロード

本稿の対応ポイント「仕入先マスタの住所細分化」や「支払方法」に関して、もう少し詳しい例も含めた資料をご用意しました。

ダウンロードはこちら

 

 

関連ページ

ビジネスエンジニアリングのSAP事業
1991年に日本初のSAPパートナーとなり、1993年に国内第一号SAPユーザーへの導入を実現して以来、ERP導入支援を中心にSAP関連事業を推進し、多くのお客様からの信頼を得ています。
SAP S/4HANAなど基幹システムだけでなく、ビジネスネットワーク SAP Ariba、サプライチェーン計画ソリューションであるSAP IBP等の多彩なラインナップを取り扱い、お客様のビジネスの変革をシステム面からご支援しています。

ビジネスエンジニアリングのSAP事業詳細はこちら