本コラムでは、弊社で大企業への導入実績のあるリベート管理機能について紹介する。
リベートは日本の製造業では一般的な商習慣であるが、海外で同様の商習慣を持つ国は限られている。そのため、SAPはじめ海外製の基幹システムにはリベート管理機能が搭載されていないことも多い。
また、会社によって割戻額の算出方法が様々であるため、要件に合わせたアドオン機能の開発が必要となる場合が多いのが現状である。
そこで本コラムでは、システムの導入を検討している製造業向けに、リベート処理のシステムでの実現方法、導入事例について解説する。
リベート処理とは、下記の図のように、取引や契約において、あらかじめ定められた条件に基づき、売上金額の一部を後から購入者に返還する処理のことである。日本ではメーカーから消費者へ商品が届く過程において、卸売企業や量販店を介した取引で実施されることが多い。
この制度は、取引を円滑に進めるだけでなく、卸売企業や量販店との信頼関係の構築や販売促進を目的として設けられている。
リベートの管理には、支払い方法やリベート額の算出方法、卸売企業や量販店など支払先ごとにさまざまな形態が
存在する。
本章では、それらの分類について紹介する。
基本はシステム外のリベート管理と同様である。契約作成、引当、引当計上、支払の流れで実施する。引当、引当計上、支払は定期的に発生するため夜間ジョブで実施することが望ましい。
1.契約作成
リベートの契約期間が始まる前にあらかじめ顧客と協議し、リベート対象の品目、流通経路、契約期間、割戻率等の事項を決定し、リベート契約を締結する。
2.引当
日々発生する請求伝票を元に、契約に合致する伝票を探索。契約の割戻率と伝票の販売額を元に、割戻額を計算。
3.引当計上
引当の算出結果を、得意先ごとの支払引当金として会計計上。
4.支払
契約期間終了後はリベートの総額を算出し、支払日が到来したら得意先への支払いを実施する。
弊社で食料品メーカーにリベート管理パッケージを導入した事例を紹介する。顧客要件とその解決策、及びシステムでの実現方法を図解した資料を示す。
<顧客要件・解決策>扱う品目数が多いため、品目をグループ化して契約に設定したい。
→品目コードやその他品目の分類値でグループ化できる機能を使用。
そのグループを契約に登録することで煩雑な運用を回避。
流通経路ごとに割戻額の計算式を変えたい。
例)卸売企業を介する場合は割戻率1%、介さない場合は2%など。
→流通経路定義機能をアドオンで作成。流通経路情報を伝票、契約の両方に保持することで、
流通経路ごとに異なる割戻率での計算を実現。
顧客が直接売り上げた卸売企業、中食企業、飲食店、量販店以外にも、卸売企業から自社製品を購入した量販店と
リベート契約を締結したい。
→卸売企業による量販店毎の売上額情報はシステムでは保持していないため、EDI連携データを日次で受領し、
倉出実績データとしてシステムに取り込む。
契約の進捗率を一覧で確認できるようにしたい。
→達成リベート契約の場合は前年実績との比較が必要なため、現時点での達成率を確認する必要があった。
現時点での契約の割戻額と売上額を一覧で確認できる帳票を作成。
引当は日次で実施し、引当戻しおよび決済は契約期間終了後や月次で支払う要件。
→日次の夜間ジョブで引当を実施し、月次の夜間ジョブで引当戻しおよび決済を行う。
契約のタイプに、前年実績と比較する達成リベートが存在。
→達成リベート契約の場合、契約登録日の夜間ジョブで前年実績を取り込む機能を追加。
本記事ではリベート処理をアドオン機能として開発する前提で解説した。しかし、昨今は、業務をシステムに合わせる「Fit to Standard」が主流となりつつある。これに伴いリベート処理においても、標準機能での対応が難しい場合には、システム外での業務プロセス改善や代替手段の提案など、多角的な視点で顧客の課題解決を支援する提案力も必要になる。弊社では導入実績を踏まえ、お客様の要望、業界の最新トレンド、その他諸々の要素を加味し、最適なソリューションを提供できる体制が整っているため、ぜひご相談いただきたい。