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コラム |第1回 クリーンコアを維持するための拡張開発| {{ site_settings.logo_alt }}

作成者: 瀬戸 啓介|Jun 20, 2025 1:50:20 AM

 

クリーンコアとは、SAPが近年提唱している戦略で、ERPシステムの標準機能を最大限に活用するために、Fit to Standardを徹底し、カスタマイズを最小限に抑えることを目指す戦略です。 これにより、ビジネスの変化に柔軟かつ迅速に対応可能となります。
本稿ではクリーンコアを維持するための拡張開発(アドオン)手法について紹介します。


業務追随で導入した従来型ERPはデジタル変革を阻んでいる

かつて「ERP導入はBPR(Business Process Re-engineering:業務変革)とセット」と言われていましたが、実際は、スクラッチしか経験がないために、現行業務の踏襲を前提とする導入スタイルが多く見受けられました。そのために、膨大なアドオンが開発され、システムは複雑化し、運用・保守も高コスト化しています。またERPのコアロジックと密につながったモノリシックな状態のシステムがアップグレードを阻害し、デジタル変革を取り組む際の大きな阻害要因となっています。

阻害要因となる実装例
  • バッチインプット
  • モディフィケーション
  • 未公開(未リリース)APIを使用
  • 古いUI技術に基づくアドオン画面・レポート
  • 公開APIを使用せずに物理テーブルに直接アクセスするアドオン など

中には、アップグレードで「致命的」に支障となっており、SIerに見積依頼をしたら断られた残念な経験をお持ちの方もいらっしゃることと思います。

 

クリーンコアの目的はビジネスや技術の進歩に対する俊敏性の獲得

クリーンコアは、冒頭にも記載した通り、ERPシステムの機能を最大限に生かすため、Fit to Standardを徹底し、カスタマイズを最小限に抑えることを目指す戦略です。「導入して終わり」ではなく、ERPシステムの「機能が止まらず進化していく」ことが前提となっています。

これまでのERPコア部分と密につながったモノリシックなITシステムを分解しクリーンコア化すれば、ビジネスとテクノロジーの俊敏性を向上させ、データを活用したビジネスモデルを実行する企業へと変わることができます。

具体的には、公開インターフェイスを使用した実装により、アップデートやアップグレードに伴う調整作業が大幅に軽減されます。 また、タイムリーかつスムースなアップグレードにより、生成AIやサステナビリティソリューションを含む最新のイノベーションをビジネスに活用できるようになります。

 


クリーンコアを維持するための拡張開発とは

可能な限り、クラウド指向に設計されたSAP S/4HANA(以下、S/4HANA)の新しい拡張フレームワークを利用し、アップグレードを阻害しない拡張方式や実装を行った拡張開発(アドオン)のことです。

拡張開発方式の種類は、S/4HANA内での拡張実装(In-App拡張)として、

・開発知識のないコンサルやIT部門のキーユーザーが標準機能の範囲内で対応可能な「Key User拡張」
・ABAP開発者がS/4HANAシステム内で SAP標準リポジトリオブジェクトの拡張および独自のカスタムオブジェクトの新規開発が可能な「Developer拡張」
・従来型の「クラシック拡張」

上記3種類と、BTPなどS/4HANAの外で拡張実装する「Side-by-Side拡張」があります。

このうち、クラシック拡張以外の拡張開発方式を採用することでクリーンコアを維持できます。

 


参考までに、S/4HANA拡張開発方式の判断基準も以下に示します。

 

 

次回は、4つの拡張開発方式の一つ「Developer拡張」について、解説します。

※「第2回 クリーンコアを維持するための拡張開発~Developer拡張」 はこちら