前回、SAPが近年提唱しているクリーンコアとは何か、その目的や効果と、クリーンコアを維持するための拡張開発(アドオン)の種類とその選定方法を説明しました。今回は、4つの拡張開発方式のうち、Developer拡張について解説します。
SAP S/4HANA(以下、S/4HANA)上に直接アドオンをするIn-App拡張と呼ばれる拡張手法の一つで、S/4HANAをクリーンコアの状態で維持し、またその状態に到達しやすくするための新しい拡張方式です。大きく5つの特徴があります。
次に、これまでの実装方法(クラッシック拡張)とDeveloper拡張はどう異なるのか、図を用いて説明しましょう。
運用保守時のインターフェースエラー発生を悲観的に想定し、エラーの原因特定とリカバリーの容易さを目的に下記の方式を多く採用していました。
S/4HANA標準APIを外部から実行するのではなく、アドオンテーブル(IFワークテーブル)を経由して業務テーブルにデータ更新を行うようにしている点が特徴です。
ところが、Fit to Standard導入が基本のS/4HANA Public Cloud(RISE with SAP)の環境下では、下図のように、これまで利用可能だったものが利用不可になります。
クラシック拡張で採用していた実装方式をDeveloper拡張で実現しようとすると下記の構成となります。
システム間データ連携機能(バッチ処理)の実装方法ついて、従来アドオン方法(クラシック拡張)で利用してきた機能が、開発者拡張を利用するとどのように置き換わるのか、比較、整理しました。
S/4HANA Public Cloud(RISE with SAP)の環境下にあっても、クラッシック拡張と同等レベルの機能開発は可能です。
もちろん、ABAPクラス、BOインターフェース、ジョブ実装クラス、EML言語など、新しく習得すべき事が多いのも事実ですが、決して難解ではないため、尻込みする必要はありません。拡張開発方法相互の親和性という点では今の段階では一部不便なところも見受けられますが、その解消も時間を置かず解消されると期待しています。
今後も、SAP製品の最新技術情報を積極的に入手し、検証を重ね、より良いアーキテクチャーを追求していきたいと考えています。
※本稿記載のDeveloper拡張について、開発画面キャプチャを利用した開発者向け資料は、下記からダウンロードできます。