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コラム

SAP

SACのAI機能の活用 - 計画・予測・分析を一体化したこれからの予算管理

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予算管理業務は、予算管理ツール等の活用で、システム化されている部分もありますが、まだまだ手作業に頼っている業務も多く、効率化の余地があると考えています。本コラムでは、SAP Analytics Cloud(以下、SAC)のAI機能を使うと予算管理業務がどう変わるかをご紹介します。

 

実績収集・集計はシステム化されたが、肝心なところは頭に汗をかくアナログ作業

予算作成時期は、どこの管理者も忙しくなります。実績収集や予実比較のレポーティングはシステム化され、すぐにレポーティングできる状態になってはいるものの、実際起きたことと過去の実績数値の関係性を振り返るとともに、経験等も加味しながらGoodケースやBadケースを想定し、さらに今後の理想を思い描き、鉛筆(キーボード?)をなめながら意思入れしていく。このような予測作成業務のために日単位で時間を割かれている管理者も多いと思います。また、部署単位の予算が部門に集計され、さらに事業、会社へと積みあがってく際には、工数がさらに積み重なり、会社全体としてみると予測作成にかなりの時間を割くことになります。 こういった業務に、「AIがあればもっと楽になるかもしれないが、難しそう」と思われる方も多いのではないでしょうか。

 

SACは救世主たり得るか

筆者は、2017年頃よりSAP BPCのコンサルタントとして複数社への予算管理、管理連結のコンサルティング活動をしていることから、2022年からはSACにも取り組んでいます。
SACはアナリティクスと計画のためのソリューションで、財務計画、サプライチェーン計画、業務計画などに利用されます。
ここでは、財務計画、つまり予算管理業務に焦点を当てて、SACに組み込まれたAIの予測機能の利用可能性について述べていきたいと思います。SAC予測機能には、「時系列予測」「Smart Predict」の2つの主要な機能があり、段階的に業務を変化させることができると考えています。

 

効率化に貢献、過去データの統計解析に基づく「時系列予測」

「時系列予測」機能は、過去データの「季節変動」や「サイクル性」、「上昇・下降傾向」を解析し、自動的に予測を作成します。
例えば、左の図は、売上を予測したものですが、過去実績である実線部分に山と谷が定期的にみられます。これをシステムが「サイクル」と捉え、さらに山の頂点が年々増加している状態を「上昇傾向」と捉えて、予測期間の予測値が作成されます。

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「時系列予測機能」は、このように「季節変動」や「サイクル性」、「上昇・下降傾向」などある程度傾向のあるデータの予測に活用しやすいと考えられます。例えば、予算管理領域での活用例としては、外的要因による変動が比較的少ないとされる「経費の予測」で、データドリブンの正確な予測として活用できると考えています。 「これだけでも助かる」と感じられる方は多いのではないでしょうか。また、今までは、自分なりに関数を組んで計算されている方にも、毎回の調整などの手間がなくなり、お役立ていただけるのではないでしょうか。 予測作成がシステムによって効率化されると、結果的にビジネスのPDCAサイクルのスピードを速くでき、変化に対し俊敏な対応が取れる経営につながると思います。

 

微妙な調整やインフルエンサを加えて反映できる高度な「Smart Predict」

「Smart Predict」は、機械学習エンジンによる予測に特化した機能です。 「時系列予測」と同じ統計解析が可能ですが、より精度の高い予測を作成できるほか、サイクルや傾向についての詳細な解析結果を確認することができます。

機能の特徴としては、予測対象を補足する要素であるインフルエンサを加えて解析することができ、より正確な予測が導き出せます。

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活用方法としては、時系列以外の要因で変動する傾向のあるデータの予測に活用しやすい他、インフルエンサの将来値を複数パターン用意すれば予測結果を複数作成し、比較検討して選択できるという活用が期待できます。 予算管理領域での活用例としては、市場動向等の外的要因による変動が大きい「売上や原価の予測」での予測の一次案作成や、予測シミュレーションで活用できると考えます。

ただ、Smart Predictを予算管理業務で活用する前段として、よく「AIは学習させて育てていく」と言われますが、利用者は、Smart Predictの機能に触れ、予測モデルを最適化する、つまり、予測に影響を与えるインフルエンサは、何か、を特定し、学習させて精度を評価していく活動は欠かせないと感じています。

 

予算管理業務の効率化と精緻化、さらに経験と勘の引継ぎも期待

予算管理業務におけるSACのAI機能の活用、イメージが湧きましたか?

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予測作成の部分で「時系列予測」「Smart Predict」の活用による「ビジネススピードの向上」や施策立案時のシミュレーション時に「Smart Predict」を活用することで「効果的な施策立案」の効果が期待できます。
また、長年培ったインフルエンサ情報やその影響を、個人の「勘」や「経験則」に閉じ込めることなく、「Smart Predict」の予測シナリオの中で解析に組み込み学習させていくことで、人手で行ってきた作業をシステムに落とし込むことができます。優れた経験と勘をシステムに引き継ぐのです。その設定根拠を明らかにしておけば、システムのブラックボックス化も防げ、属人化からの脱却も期待できると考えます。

企業業績に及ぼす変化の要因は多様化していますが、今回ご紹介したSACの「Smart Predict」含めてSAPのAI機能は著しく進歩しており、AI機能をより積極的に活用していくことで多様化する変化にも柔軟かつ効率的に対処していくことができると考えます。近い将来、AI機能が一般化された暁には、皆様が今よりはるかに効率的な予算管理ができるように、皆様を支援していきたいと思います。

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黒石 慎二
黒石 慎二
大学卒業後、ビジネスエンジニアリング入社。以降、SDやCRMなど販売領域の導入等に従事。2017年より SAP BPC 導入・展開・保守のリーダー・コンサルタントとして活動、2022年からはSACに取り組んでいる。電力・電機・医薬・情報等の幅広い領域のお客様の案件に従事し、複数社への予算管理、管理連結のコンサルティング経験を有する。