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コラム

SCM

5Sによるサプライチェーン業務改革!!(その2) 間接部門の5S

前回(5Sによるサプライチェーン業務改革!!5Sって何?)は、5Sの定義とその活動による改善効果について解説しました。今回は、製造現場に比べ、業務の生産性向上が難しいと言われる間接部門の5Sを取り上げます。具体的には、設計・開発、生産管理、購買、品質管理などの職場を念頭に話を進めていきます。

間接部門の生産性向上が難しい訳

間接部門はその仕事の性格上、①直接“物”を扱っていない、②ルーチンワークが少ない、③部署内外の人の介在する作業が多い(仕事の内容が相手に左右される)などの特徴があります。
例えば、生産管理の担当者は、営業の販売見込や受注情報、物流部門からの在庫状況、製造部門の要員、設備などの資源に対する負荷状況などを考慮して最適な生産計画を立て、日々その変更管理に追われています。月次の計画や定期的な作業指示など、概ねルーチンワークの業務もありますが、同じ手順でもインプットされる情報(納期変更、設計変更、進捗、歩留実績、品質レベルなど)の変化により業務上の判断や対処方法が変わります。

業務の5Sのやり方

このような5Sによる改善活動は、その積み重ねにより組織の基礎体力を確実に向上させるのですが、個々の業務そのものが非定型で属人的な内容が多い間接部門においては、どうしても業務の補助的改善になりがちで、その組織全体の生産性向上にまで発展するのは難しいです。
そこで、次のステップとして、5Sを伝票や書類だけでなく“業務”そのものを対象に適用してみます。まずは、“業務”の5Sをどのように行うか具体的に説明します。

<図1 業務の5S>
図1 業務の5S


図1は、業務の5Sの手順を表しています。初めに、業務自体に何があるのか調査します。いわゆる業務の棚卸です。次に、必要な業務とあまり必要でないと思われる業務の仕分けを行います。必要な業務は、複数の経験者の知見による業務内容の定義と手順の共通化を行い、必要ないと思われる業務は、他の業務への統合や、一旦業務を止めてみてその影響を評価しつつ徐々に集約します。
この手順に沿って活動を行うことにより、業務の「整理」「整頓」「清掃」が実現できます。最初は業務の棚卸の段階で、そのあまりの業務の多さとその属人的な状況に挫折することが多いのですが、地道な仕分け作業を行うことにより業務の重要度と共通性が徐々に見えてきます。また、業務は関連する部署の影響や扱う情報の変化に応じて、変えることが求められるので、上記の活動を一過性に終わらせることなく、業務の見直しをルール化し定期的に行うことが必要です。これが、いわゆる「清潔」の活動結果としての、業務の3Sが実現している状態を維持することになります。さらにこの業務自体の内容、業務改善の効果を評価して、PDCAサイクルを回すことにより「しつけ」が実現でき、継続的なレベルアップを図ることができます。
この業務の5Sは、業務の定義、手順などの効率化を実現するもので、いわゆるプロセス改善に相当します。プロセス改善と言っても、ISO9001の品質マネジメントシステムのように認証を目的としているわけではありませんので、単に業務を形式化するのでなく、業務の見える化とその効率化を目的に取り組むことが重要です。当然業務内容によっては、セキュリティや内部統制に留意する必要はありますが、常に実利をとるとどうなるかという視点で業務を見直します。
以上のような5S視点の改善活動と業務の5Sによって、間接部門の仕事の効率化は実現できるのですが、冒頭の間接部門の業務の特徴の最後の1つの課題がまだ解決できていません。つまり、部署内外の人の介在する作業、すなわち「コミュニケーションを行う業務」の改善に手を付けないと本当の意味での間接部門の生産性向上は実現できません。
そこで必要なのが「情報の5S」の視点です。

情報の5Sとは

今までの一般的な5Sに対して、「情報の5S」を以下のように定義します。
この辺りの定説はなく、特に最後の2つのSは、いろいろなバリエーションがあります。

<表2 情報の5Sの定義>
表2 情報の5Sの定義

最初の2S(「整理」「整頓」)は、“物”の2Sとほぼ同じ考え方で、そのまま活動対象を“情報”に置き換えており、表1もその具体的な活動例の1つです。情報の「清掃」については、処理の正確さや情報自体の正しさを担保することです。「共有(Share)」は、情報が配布され、その後利用されることにより、ビジネス上の意思決定を生み出し、さらに別の活動成果に繋がりことで、業務効率に大きな影響を与える取り組みとなります。最後の「セキュリティ(Security)」は、情報を扱う上では今や必須要件であり、コンピュータシステムに限らず書類や伝票も重要な対象要素です。ちなみに、定義自体は、情報セキュリティのISO標準であるISO27002によって定義されているものです。

情報の5Sを実現するために必要なもの

間接部門は、物(部品や機械)を直接扱う代わりに、主に情報を扱っています。その情報を交換するための業務は、会議、電話、FAX、E-Mail、立ち話など多岐にわたり、かつその中身は非定型情報で、さらに相手が同じ場所かあるいは同じ時間で同期したコミュニケーションが多く、業務における時間的制約となっています。
こうした情報に係る業務に対しては、コンピュータを使った何らかのシステムが必要となります。情報を整理して蓄積し、共有・配布し、相互利用を目的とする仕組みは、既に生産管理システムやERPパッケージ、ワークフローシステムなど導入している企業も多く、ある程度の機能は果たしています。ただ、いずれの仕組みも計画や実績、承認申請など情報として確定したものしか登録できません。その情報を確定するまでの事前の調整作業におけるコミュニケーションおよびその内容、意思決定の経緯・ステータス、現場の状況に基づく人の判断など、業務で発生する大半の情報がシステムには載りません。つまり、情報の5Sのためには、こうした基幹システムには載らない多様な情報を管理する仕組みが必要となります。

こうした視点で提供されているシステムは、従来の業務パッケージではあまり見受けられませんでした。
一部のCRMやコールセンターシステムで、インバウンドのコミュニケーションをそのコミュニケーション媒体と共に統合したものもありましたが、製造業の間接部門の業務を意識した仕組みはありませんでした。また、情報共有やコミュニケーションツールとして、Excelファイルを共有サーバに置いて複数部署で管理することを行っている企業も多いですが、情報の5Sの一部しか実現できておらず、特に正確性やリアルタイム性、セキュリティなど複数組織をまたぐツールとしては甚だ不十分なものでした。
その点でBusiness b-ridge(ビジネスブリッジ)は、ERPの基幹システムのように確定したデータを管理するのみではなく、ワークフローのように1方向のデータ管理を行うにとどまりません。双方向のコミュニケーションを支援して、情報を「整理」「整頓」「清掃」された状態で再利用することができ、さらにセキュリティにも十分配慮した仕組みです。まさに情報ライフサイクルマネジメントの器として、間接部門の情報の5Sを実現するための仕組みといえます。

次回は最終回として、間接部門の情報の5Sを行うことにより、社内はもとより関連する取引先を含むサプライチェーンにおける生産性向上の実現についてご紹介します。

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有賀 隆夫 氏
有賀 隆夫 氏
株式会社ITマネジメント
外資系コンピュータメーカー、国内SIerにて製造業を中心に国内外のERPパッケージのコンサルティング、導入プロジェクトのマネジメントに従事。独立後は、製造業の経営戦略策定から現場改善、システム導入まで一貫したコンサルティング、支援業務を実施。
企業の”儲かる仕組み”の実現に日々取り組んでいます。