安全保障貿易管理:輸出者が遵守しなくてはならない法令解説(1/2)
安全保障貿易管理令は、輸出者にとり必ず遵守しなければならない最も大事な法令の一つで、怠ると企業の存亡にも影響します。リスト規制、キャッチオール不規制等の内容、チェックの留意点、見逃しがちな事例を、貿易プロフェッショナルが語ります。
輸出者が遵守しなければならない安全保障貿易管理とは?
輸出者にとり必ず遵守しなければならない最も大事な法令の一つが安全保障貿易管理令です。違反すると企業の信頼は一挙に失われ、再び信頼を回復するまでには、相当な時間と費用が必要となるだけでなく、場合によっては企業の存続すら危うくなるリスクを孕んでいます。
安全保障貿易管理とは、武器、高性能工作機械、生物兵器の原料となる細菌等、軍事的に転用される恐れのある物や技術が、大量破壊兵器の開発者やテロリスト等に渡らないように、日本を含む国際社会が一体となって管理する概念です。
現在日本では、外為法(外国為替及び外国貿易法)という法律に基づき輸出規制が実施されており、次の規制に該当する輸出には事前の許可が必須です。
1.リスト規制 輸出しようとする物が輸出令別表第1の1~15項(*A)に該当する場合、又は提供しようとする技術が外為令別表の1~15項(*B)に該当する場合には、経済産業大臣の許可が必要となる制度。
2.キャッチオール規制 リスト規制対象外の汎用品(木材・食料品等は除外)であっても、最終用途や最終需要者が大量破壊兵器・通常兵器の開発等に関係する場合は、経済産業大臣の強化が必要となる制度。
→輸出するほぼ全ての品目について事前チェックが必要。
*リスト規制/キャッチオール規制で輸出管理の対象となる「特定の貨物や技術」「特定国や地域」は、国際輸出管理レジーム(ワッセナーアレンジメント、原子力供給国会合、オーストラリアグループ等)に基づき決定されています。
3.積替規制 仮に陸揚げした貨物が、輸出令別表第1/外為令別表の1項(武器)に該当する貨物・技術、及び輸出令別表第1/外為令別表の2項~16項 (*C)の貨物・技術に関する仲介貿易取引であって、大量破壊兵器の開発等に用いられる恐れのある場合には、経済産業大臣の許可が必要となる制度。
4.仲介貿易規制 輸出令別表第1/外為令別表の1項(武器)に該当する貨物・技術、及び輸出令別表第1/外為令別表の2項~16項の貨物・技術に関する仲介貿易取引であって、大量破壊兵器の開発等に用いられる恐れのある場合には、経済産業大臣の許可が必要となる制度。
【重要ポイント1】外為法による輸出管理の対象は、「物と技術」!
違反するとどうなるのか?
許可が必要な物や技術を無許可で輸出又は提供すると、外為法違反となり法律に基づき刑罰を科せられることがあります。 具体的には、
1.刑事罰: ◆1000万円以下、又は対象となる貨物や技術の価格の5倍以下の罰金 ◆10年以下の懲役
2.行政制裁: ◆3年以内の物の輸出及び技術の提供禁止
3.社会的制裁:◆上記1、2以外にも信用失墜等により社会的制裁を受ける恐れがあります。
違反しないためのチェック手順は?
- 輸出者がやるべき手順は次の通りです。
2.で該当しなかった品目がキャッチオール規制の対象外であることを確認する
3.貨物の輸出向地国がホワイト国(*D)であることを確認する
4.キャッチオール規制の対象品目で、非ホワイト国向けの貨物については、最終用途と最終需要者を確認する
5.リスト規制の品目以外でも、「インフォーム要件」(*E)に該当する場合には輸出許可を申請する必要がある
上述5項目を確認後問題無ければ、初めて輸出契約業務を開始します。 契約締結後、輸出許可が必要な場合は、直ちに経済産業省貿易管理部に対して許可・承認申請手続きを行います。
- 経済産業省のホームページ掲載の補完的輸出規制(キャッチオール規制等)輸出許可申請に係る手続きフロー図を参考にしてください。
- http://www.meti.go.jp/policy/anpo/kanri/catch-all/frouzu.pdf
【重要ポイント2】貨物や技術を輸出・提供する場合は必ず該非判定が必要!
【重要ポイント3】該非判定の責任所在は輸出者にあることを肝に銘じる!-
見逃しがちな事例
- 次のようなケースも安全保障貿易管理の対象となります(規制対象であれば許可が必要です)
-
- 海外で開催される展示会にIT機器や技術書類を送る。
- 海外出張の際にハンドキャリーでIT機器、小口貨物、設計図、技術書類を持って行く。
- 国際宅急便(クーリエ)や郵便で製品や設計図・技術書類を送付する。
- パソコン、ポータブルハードディスク、USBメモリー等にソフトウエアやプログラムを保存して外国へ持ち出す。
- 新商品を宣伝するために、サンプルを海外の顧客へ送付する。
- 日本国内で行う技術指導であっても、リスト規制技術を非居住者(*F)に移転(取引)する。
- 自社の海外駐在員に対して、本邦出張の際に技術に関する打合せを行う。(電話やテレビ界による打合せも同様な扱い)
- 輸入した機器類が故障したので、修理のために海外メーカーに返送する。
- プログラムが内蔵された工作機械を外国へ送る。
- 国際貢献事業で中古のIT機器類を中南米のA国に寄付する。
- 次のようなケースも安全保障貿易管理の対象となります(規制対象であれば許可が必要です)
困った時の相談先
- 安全保障貿易管理に関して不明な点や困った際に、信頼出来る問い合わせ先や相談可能な機関にご相談ください。関連インターネットサイトは次の通りです。
1. 経済産業省 貿易管理部 - URL http://www.meti.go.jp/policy/anpo/
*防衛装備移転三原則や外国ユーザーリストに関する質問、安全保障貿易管理政策全般やHPへの意見:
⇒安全保障貿易管理政策課 TEL 03-3501-2863
*安全保障貿易管理制度概要や法令解釈の質問:
⇒安全保障貿易管理課 TEL 03-3501-2800
*リスト規制・キャッチオール規制及び包括輸出許可の法令解釈(該非判定、申請手続き等)への質問:
⇒安全保障貿易審査課 TEL 03-3501-2801
・「リスト規制」は、該当する規制リスト項目、貨物・技術に関する説明資料を用意して連絡して下さい。
・「キャッチオール規制」は、仕向地、用途チェックリスト、顧客チェックリストを用意して連絡して下さい。
*輸出者等遵守基準や輸出管理内部規定(CP)に関する質問/不正輸出の連絡
⇒安全保障貿易検査官室 TEL 03-3501-2841
*安全保障貿易管理についての一般的な質問
⇒安全保障貿易 案内窓口 TEL 03-3501-3679
2.安全保障貿易情報センター(CISTEC)
URL http://www.cistec.or.jp/
3. 日本機械輸出組合(JMC)
URL https://www.jmcti.org/
輸出管理コーナー:https://www.jmcti.org/jmchomepage/soudan/index.htm -
おわりに
- 安全保障貿易管理を適切に実施していくために、各輸出企業が管理体制を整備し、これを確実に実施していくことが求められています。また、キャッチオール規制の導入に伴い、輸出企業の判断に委ねられる部分が従来に比べ増加しています。本コラムはそれらの第一歩として、どこよりもコンパクトに安全保障貿易の概略をお伝えしております。安全保障貿易の概略理解のために、ご活用ください。
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