多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を経営の最重要課題と位置づけ、様々な取り組みを進めています。しかし、その一方で、
「なぜか発注伝票の承認プロセスに時間がかかっている」
「月末の締め作業が特定の担当者に集中し、残業が常態化している」
このように、課題の存在はぼんやりと見えているものの、その根本原因がどこにあるのか、確たる証拠を持って特定できずにいるのではないでしょうか。現場にヒアリングしても、「ウチの業務は特殊だから」「長年の勘でこうやっている」といった声に阻まれ、客観的な分析が進まない。あるいは、いざ業務改善に踏み切ろうとしても、「具体的にどれくらいの効果が見込めるのか?」という問いに、明確な数値を提示できない…そんなジレンマを抱える経営者やDX推進担当者は少なくありません。また、すでに避けては通れないAI時代においても、現在の業務プロセスがきちんと見えていないと、AIの力を最大限に活かすのは難しいでしょう。
本稿では、企業の業務プロセスを可視化・分析し、継続的な改善を支援するクラウドベースのソリューションであるSAP Signavioを用いた業務プロセスの改善方法について説明します。
SAP Signavioは、既存の業務システムであるERPなどに蓄積された膨大なログデータから現状の業務(As-Isプロセス)を正確に把握し、あるべき姿(To-Beプロセス)を設計するためのツールです。
SAP Signavioの中核をなすのは、主に以下の機能です。これらが連携し、継続的な改善サイクルを回すことを可能にします。
ではここからはSAP Signavioを用いた具体的な業務プロセスの改善をおこなう流れを説明していきます。
上記の図だと、左下にある「KPIによる評価」から始まります。
業務改善は、まず「現状を正しく把握する」ことから始まります。感覚的な問題意識だけでは、改善のインパクトを客観的に示すことはできません。そこで重要になるのが、KPI(重要業績評価指標)によるプロセスの評価です。
SAP Signavioでは、あらかじめKPIが定義されており、プロセスのパフォーマンスを継続的にモニタリングすることが可能です。ダッシュボードでプロセスを常に監視し、目標値から外れた、あるいは悪化傾向にあるプロセスを特定します。また、業界の平均値と比較して自社のプロセスのパフォーマンスレベルを客観的に評価することもでき、改善目標を設定する際の参考にできます。
KPIによって「どこに問題がありそうか」を特定したら、次は「なぜ問題が起きているのか」を深掘りするフェーズです。ここで絶大な力を発揮するのが、SAP Signavioのプロセスマイニング機能です。
プロセスマイニングは、ERPなどのシステムログに記録された膨大なデータを解析し、実際の業務がどのように流れているかを、隠れた例外処理や手戻りも含めてすべて可視化します。
この客観的な分析により、例えば以下のような問題の根本原因が明らかになります。
データに基づいた客観的な分析は、これまで感覚的にしか語れなかった問題点を誰の目にも明らかにし、改善に向けた具体的な議論の土台を築きます。
問題の箇所とその原因が明らかになれば、いよいよ「あるべき姿(To-Be)」の設計、すなわちプロセスの改善検討に移ります。
SAP Signavioを使えば、関係者全員が可視化された現状(As-Is)のプロセス図を見ながら、課題解決に向けた具体的な改善案を検討し、合意形成を図ることができます。さらに、設計した新プロセスをシミュレーションすることで、「この変更で本当にリードタイムは短縮されるのか?」「コストはどれくらい削減できるのか?」といった効果を事前に検証できます。これにより、勘や経験だけに頼らない、データに基づいて改善されたプロセスをSAP Signavio上で定義・管理できます。
重要なのは、これらの活動を一度きりで終わらせないことです。新しい業務プロセスを導入した後も、定期的にステップ1に戻り、改善のサイクルを継続することで、変化に強い企業文化を育むことができるのではないでしょうか。
本記事では、多くの企業が抱える業務プロセスの課題と、SAP Signavioがそれらをいかにして解決するのかを解説しました。
SAP Signavioは、単なるITツールではありません。これまで担当者の「勘と経験」に頼らざるを得なかった業務改善や意思決定を、データに基づく科学的アプローチへ強化する、信頼できるパートナーです。
製造業のSCMに関わる領域での業務課題の解決については、お客様と共に解決に取り組んできた私たちの得意分野です。DXの次の一手に悩んでいる方はぜひ、ご相談ください。
これまでの豊富な経験をもとに、さらなる継続的な改善をSAP Signavioを活用してご支援をさせていただきます。