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コラム

MDM

MDMアーキテクチャのバリエーション

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前回は、データ利活用基盤アーキテクチャのバリエーションについてご紹介しました。今回は、MDM(マスタデータマネジメント)のアーキテクチャのバリエーションについてご紹介いたします。

マスタデータとMDM

MDMアーキテクチャの話に入る前に、まずマスタデータとは何なのか、そしてMDMの意義について簡単に確認します。

マスタデータとは、モノ・組織・人・概念など、ビジネス継続に必要な基本的な情報で、かつ一定期間以上存続するデータを指します。
情報システムで使用されるデータは、通常「マスタデータ」と「トランザクションデータ」に大別されますが、それぞれの特徴を表に示します。

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マスタデータは業務の多様な領域を跨いで使用され、複数のデータから参照されるように、ビジネスにおける重要な情報を提供します。

一方、マスタデータはその特性上、時間の経過とともにデータの重複や不一致が生じる可能性があります。例えば、顧客情報の変更や製品の更新に伴い、異なるシステムや部門で同一の対象について異なるデータが生成されることがあります。これにより、データの整合性が欠け、誤った意思決定や業務効率が損なわれる可能性があります。

MDM(マスタデータマネジメント)は、組織内の重要なマスタデータの一貫性、信頼性、精度などを維持するためのプロセス及びシステムを指します(本記事では、以降MDMを該当のシステムを指すものとして使用します)。

MDMでは、表現対象となるモノや概念に対する唯一かつ正確なデータ(=ゴールデンレコード)の作成と保持のための機能を提供します。

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MDMが提供する高品質なマスタデータは、データウェアハウス(DWH)を中心としたデータ利活用基盤への入力データにもなり、レポートや分析結果の信頼性と精度を確保します。MDMとデータ利活用基盤は、ビジネスインテリジェンスを活用したデータドリブン型の意思決定をサポートする上で、密接な関係があります。


MDMアーキテクチャの主なパターン(統合型・集中管理型・ハブ型)

MDMのアーキテクチャにも様々なバリエーションがありますが、それらのパターンを大別すると、多くは「統合型」「集中管理型」のどちらかのタイプをベースとしたものになります。

■統合型:
複数のシステムでそれぞれに作成される同種のデータを収集し、MDM上でデータ構造の標準化と名寄せを行い、集約されたデータに統合コードを採番します。この統合コードをデータ利活用に使用することにより、組織内のデータを一律に分析することが可能になります。
以下のような場合に、統合型のアーキテクチャが適しています。

  • 業務上、該当マスタの発生源が複数の組織・システムとなることが避けられない
  • マスタを使用する現行業務システムに対する業務や機能の更新を行うことが難しい
  • マスタ統合による周辺システムへの影響・負荷を最小限にしつつ、統合されたマスタデータをデータ利活用に使用する

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■集中管理型:
MDMで全社統一のコードによるマスタデータを作成し、各業務システムおよびデータ利活用基盤へ配信します。業務システムでは個別のマスタ登録は行わせず、該当のマスタの登録・更新を全てMDMに依存します。マスタデータの品質を、データ作成時に担保する方針で構成されたアーキテクチャです。
以下のような場合に、集中管理型のアーキテクチャが適しています。

  • マスタデータ登録時のガバナンス(バリデーションや、申請・承認のワークフロー等)を強化する
  • MDM導入のタイミングに合わせ、業務システム側も刷新・更新を行う
  • 業務データのコード体系をそのままデータ利活用に使用できるようにすることで変換などの手間を削減し、データ利活用を促進させる

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なお最近では、データガバナンス機能(バリデーションやワークフロー、名寄せ機能)はMDMに実装し、各業務システムでのマスタメンテナンス画面からMDMの機能をAPIコールするといった、複雑なパターンも見受けられます。

また、上記の他にも「ハブ型」と呼ぶべきタイプも存在します。

■ハブ型:
MDMのハブ型は、上記の統合型・集中管理型の折衷型(複数システムからマスタを名寄せ等により集約しつつ、マスタ配布先にも複数のシステムが存在する)として説明されることが多いですが、筆者が担当した事例では、MDMの名寄せやガバナンスといった機能は持たせず、シンプルに複数種別のマスタデータを1ヶ所に集約し、マスタデータの所在を明確にするのみに留めたものも少なくありません。

以下のような場合に、ハブ型のアーキテクチャが適しています。

  • コード統一やガバナンスは、既にマスタデータの種別単位では既存システムにより実現できている
  • 新システムの追加や、データ利活用におけるマスタデータ利用時の、マスタの参照元を一元化する
  • マスタデータ発生元の業務システムでは、業務上もしくはシステム性能上、一定期間を過ぎたマスタデータを保持できないため、別途全てのマスタデータ履歴の退避先としてMDM上にデータを保管する

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弊社MDMアーキテクチャ例(MDMの階層化)

上記とは異なるMDMアーキテクチャの事例として、MDMを階層化したパターンをご紹介します。 グローバルにビジネスを展開する製造業のお客様で、製品マスタ・取引先マスタをグローバルで一元管理するために検討を進めましたが、

  • グローバルで展開する製品や取引先がある一方、それぞれのリージョン独自の製品や取引先も存在する
  • グローバルで管理する基本属性と、各アプリケーションで個別に必要な属性の他に、商習慣や法対応などリージョン毎に管理すべき属性がある

といった点が明らかとなり、結果として管理主体の違いによりMDMを2階層(グローバル、リージョン)とし、アプリケーションも含め3階層で、それぞれ管理レベルの異なるマスタデータの属性やレコードを保持することとしました。

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MDMのアーキテクチャも、普遍的な正解は存在しない

今回は、MDMの意義と大まかなアーキテクチャのパターンを紹介しました。
マスタデータ自体の重要性や、また効率・精度・セキュリティ等の観点からマスタデータを統合し統制をかけることの必要性は、多くの方が既に認識されています。
一方、それらの課題に優先順位をつけ何に重点をおいて取り組むか、また具体的にどのようなアプローチを取るか、といった点が深掘りされないまま、特定のデータベースやアプリケーションを導入することが目的化してしまうことも少なからずあると感じています。

マスタデータの統合にも考慮すべき様々な観点があり、それらの判断の組合せにより様々なアーキテクチャのバリエーションが考えられます。MDMの導入をお考えの際は、既存・既知の構成に縛られることなくフラットに現状や将来像をご検討ください。

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加藤義弘
加藤義弘
スクラッチ開発からERP、BPM等のアプリケーション導入コンサルタントを経て、近年はMDMやデータ利活用基盤導入などのデータマネジメント関連プロジェクトにおいてシニアアーキテクトとして活動。構想策定・要件定義・データモデル設計等、データマネジメント上流フェーズのコンサルティングを担当する。 DAMA(データマネジメント協会)日本支部会員。