前回は、顧客マスタにおける法人と個人の違いについてご紹介しました。
MDM(Master Data Management)において、顧客マスタと並んで企業のビジネスの根幹を支える最も重要なマスタとして「品目マスタ(製品マスタ・商品マスタなども含む)」が挙げられます。
顧客マスタの設計に多くの論点があったのと同様に、品目マスタの設計や運用においても検討すべき多くの論点が存在します。
今回は、品目マスタにおける主要な論点を取り上げ、それぞれのポイントを解説します。
一口に「品目」と言っても、業種やビジネスモデルによって取り扱う品目の種類は様々です。例えば製造業の場合であれば、「原材料」「中間製品」「製品(完成品)」など、製造工程の段階に応じた品目が存在します。
一方、卸業や小売業の場合であれば、外部から仕入れた「仕入品」、形を持たない「サービス提供」や「ライセンス販売」なども品目として扱われます。
一般的に、企業内の「品目マスタ」は、上記のような性質の異なる多様なデータを全て包含して管理する重要な基盤となります。
品目マスタには様々な論点がありますが、ここでは品目の種類として「商品・製品」に注目し、代表的な論点の例をいくつか紹介します。
品目マスタの中では、対象となる品目の仕様(スペック)を管理する必要がありますが、品目の種別により管理すべき仕様の項目は大きく異なります。
例えば、IT機器を商品として扱う場合、「スマートフォン」と「プリンター」を比較してみましょう。「外形寸法」や「重量」といった項目は、どちらの品目にも当てはまる共通の仕様と言えます。
一方で、スマートフォンであれば「画面サイズ」や「保存容量」、プリンターであれば「インク種類」や「用紙サイズ」など、それぞれ個別の仕様が存在します。
品目マスタのデータモデルを設計する際は、例示のような複数の仕様体系を持つ品目を同じ「品目」として同列に扱いながらも、個別の仕様をそれぞれ固有の属性として柔軟に管理できるようなデータ構造を検討する必要があります。例えば、スーパータイプ・サブタイプのような構造や、属性の可変管理などが挙げられます。
商社や小売業などで商品をマスタとして取り扱う場合、ある商品が在庫切れを起こしていても、商機(販売機会)を逃さないようにするために、代替となる別の商品を顧客に提案・販売したい場面が多々あります。
上記のような業務要件に対応するためには、データモデルによって商品間に「関連」を持たせておく必要があります。商品関連の代表的な例としては、以下のようなものが挙げられます。
ある商品に対して標準価格(定価)が定まっていたとしても、実際のビジネスにおいては、取引先の顧客によって価格を変更したり、購入数量やキャンペーン期間によって割引をしたりすることは一般的です。
しかし、過去のシステム設計において「一つの品目に対して一つの価格しか設定できない」というような硬直化したデータ構造になってしまっていたがために、複数の価格を設定する目的で「同一の商品であるにもかかわらず、価格ごとに別の商品コードを割り当てて強引にデータベース上に記録する」という事態に陥っているケースも散見されます。これはマスタデータの重複と品質低下を招く典型的な例です。
そのため、より一般的かつ推奨されるデータ構造としては、品目マスタ自体には標準的な情報のみを持たせ、価格に関する情報は「価格マスタ(条件マスタ)」として分離して作成します。品目コード・販売先・期間・数量範囲などの組み合わせごとに、柔軟かつ一元的に価格を設定・管理できるようにしておく必要があります。
今回は、品目マスタにおける代表的な論点について紹介しました。
今回の論点の他にも、製造業における品目マスタは部品表や工程表などに関わる論点が重要になりますが、また別の記事として紹介します。
今回のように「商品・製品」に対象を絞っても、品目マスタは、単にモノの名前やサイズを記録するだけでなく、仕様の多様なバリエーション、他の品目との複雑な関連性、そして価格というビジネスに直結する要素を内包しています。
様々な要素を考慮せずに安易なデータモデルを採用してしまうと、後からコード体系の破綻や、周辺システムへの影響・改修コストの増大を招く恐れがあります。
自社がどのような品目を取り扱い、業務上でどのように関連付け、販売していくのか。自社のビジネスモデルや将来の拡張性を深く理解した上で、柔軟かつ持続可能なデータ構造を設計することが重要です。
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