MES(製造実行管理)導入の勘所 第3回
ERPと比較して製造実行管理システム(MES:Manufacturing Execution Management System)導入の公表事例は少ないため、「何を準備したらよいでしょう?」というお問い合わせが弊社に入ります。
それにお応えして、本コラムシリーズでは、TOPICを絞ってMES導入の準備について解説します。
前回は、MESとERPの機能分担を取り上げました。今回も、MESとERPの関係に着目したテーマ「ERPとMESはどちらを先に進めるべきか」について解説します。
導入の基本は業務の流れに沿ってERPが先、MESが後
ERPとMESを導入する、もしくは既存のシステムをリプレースする場合に、どちらから先に進めるべきか?
結論としては、ERP→MESです。理由としては、「MESはERPの指示で動くものだから」ということになります。指示を出す方から決めないと手戻りが発生する、という単純な理由です。基本に沿った形、つまり、作られた計画(ERP)に基づいて、実行(MES)という業務の流れに沿った形でシステムを考えていった方が導入しやすいのです。
ただ、実際には、ERPのリプレースではグローバル拠点を巻き込むプロジェクトで時間がかかるため、先にMESを展開していきたいという場合もあります。この場合はまず現行のERPの指示のもとに動くMESを作り、後々ERPを入れ替える際にMESも新ERPに合わせる対応をします。
管理が異なる複数工場に導入する場合はまず基本型となる工場を決める
工場ごとに異なる生産管理システムが入っている場合も多々あります。最近のERPは本社一括(シングルインスタンス)で複数工場に対応していることが多いですが、少し前までは、工場ごとに生産管理システムを用意しているのが普通でした。上位システムであるERP側の指図の切り方や在庫の持ち方等が異なるとMESもそれに対応させなければなりません。複数工場に統一したMESを導入したいというご要望の場合、ERPを先に統一していただくか、もしくは、どの工場を基本とすべきか、を先に決めなければなりません。ここで基本となる工場の選び方ですが、私共では、規模の大小ではなく、パターンの網羅性で選んでいただくことをお勧めしております。基本工場導入後に他の工場に展開導入していく際、システム的な差分調整が最も少なくすむためです。
今回は、ERPとMESはどちらを先に進めるかという、サプライチェーンの視点での導入順について述べました。
次回は・・・
エンジニアリングチェーンの視点で「PLMとMESはどちらを先に進めるべきか」です。