近年、データマネジメントの重要性が盛んに語られるようになった背景として、企業データの活用が事業成長の重要な要素となってきたことがあげられます。
データ活用の一端としてデータの可視化・分析を行う際、その下支えとして、組織全体で一貫性を持たせ、質の高い情報を生み出すためのデータの収集・保存・加工といったプロセスを担うためのシステム基盤が必要になります。
このような基盤として従来、「データレイク」「データウェアハウス」「データマート」の3層構造のアーキテクチャが典型的に語られてきました。
それぞれの層は主に以下のような役割を担うものとされています。
しかし実際にデータ利活用基盤を構築しようとすると、このような単純化された構成では収まりません。それぞれの企業ごとのシステムや業務、データ活用の目的・理想像の違いから、様々なアーキテクチャの形を取ることとなります。
以下では、筆者の経験の中から全くコンセプトの異なるデータ利活用基盤のアーキテクチャを2例ご紹介します(公開用のため、一部内容は実例とは異なります)。
1つ目は、データウェアハウスやデータマートの中に更に階層を設定した例です。
この企業では、セルフサービスBIによってデータの可視化を各社員に任せる方針としました。
そのためデータ利活用基盤の役割としては、各社員が必要とするデータを適切な範囲で開示する、セキュリティとガバナンスの観点が重要視されました。
結果として、データレイク・データウェアハウス・データマートの3層構造をベースとしつつ、
という、多階層のアーキテクチャを採用し、この基盤上で、データカタログやデータ取得の申請・承認機能を充実させることとなりました。
2つ目は、データレイクとデータウェアハウスの役割を統合し、階層を削減した例です。
この企業では、基本的にデータ可視化は開発部門が行い、作成されたBIダッシュボードをユーザへ提供することを前提としています。
まず、ソースシステムの項目を以下の3種に分類します。
その上で、
というアーキテクチャとすることで、開発や保守運用の工数を削減し、またシステムのオーバーヘッドも削減しました。
以上2例のように、背景や目的が異なることでデータ利活用基盤アーキテクチャのベクトルも全く異なった方向となります。
データ利活用基盤は、どの企業にも最適な標準構成・アーキテクチャは存在せず、個々の企業で必要な実現内容を見極めることが重要です。
「MDMアーキテクチャのバリエーション」についてです。
※最初から読みたい場合はこちら
「データマネジメント知的体系ガイド(DMBOK)の読み解き方」
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